“BY THE PEOPLE , OF THE PEOPLE , FOR THE PEOPLE.” を研究する
 
谷口文朗(帝京科学大学名誉教授) 研究室の場所 〒409-0114 山梨県上野原市鶴島2375-1 TEL 090-1803-6707 メール

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上野原田園都市地域のQuality of Life 向上のための2件の野外調査と2件の構改革特区の提案 
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6.構造改革特区提案
その2:土地にも区分所有を認める提案

    6.構造改革特区提案−その2:

 構造改革特区制度のこのような威力を実感したのは平成17年秋に行われた「もみじキャラバン」という構造改革特区集中提案募集キャンペーンの時であった。続いて平成18年初夏に「あじさいキャラバン」という構造改革特区集中提案募集キャンペーンが行われた。筆者は「上野原のQOL改善向上策を構築する上で最大のネックになっている問題点を構造改革特区提案で打開の糸口を探ろう」と考えて、「土地にも区分所有を認める提案」を提出した。「土地に区分所有を認める法律がないから実行不可能」という回答が予想されたが、内閣府から伝えられた法務省の判断は「特区としては認定されないが現行法規の下で実行可能」という内容であった。

以下は「土地の区分所有」に関する構造改革特区提案のフォーマットに記した提案内容である(本件提案の別紙として背景説明資料 添付資料−2 を掲出した)。


 具体的事業を実現するために必要な措置(事項名):土地の区分所有

 措置の具体的内容:1971年に土地改良法第95条3項の認可を得てスタートし、1979年に予定の水没防止のための盛土工事が完成したにもかかわらず一部関係者の賛成が得られず事業全体が頓挫しているJR上野原駅南口土地改良事業の対象面積(12817坪)を1棟の超高層マンションに、個々の地権者の事業開始前の地籍に応じて割り当てられるJR上野原駅南口駅前駐車区画を区分所有されるマンションの個々の居室と見なして、土地の区分所有を特区として認定し、権利関係を合理化し、事業の進捗をはかる

 具体的事業の実施内容:当該土地改良事業着手以前の地権者の地積を盛土後の駐車場区画の数で表示し、土地の資産価値を駐車場からの現金収入の形で年金化することによって、 地権者に@先祖伝来の土地が収用されることがない、A継続的現金収入が保障されるというメリットを与えて区画整理事業への賛意を取り付ける。これを受けて行政が@既成事実化の進行の中で複雑化した利害関係を調整し、A土地買収に要する時間と費用を抜本的に節減して、膠着状態にあるJR上野原駅南口の整備を進め、@バスターミナル、A公営駐車場、Bエスカレーター・エレベーターの設置を進め、市民生活の便利性の向上と地域活性化の突破口を開く。

 提案理由:道が狭く、坂が多く、平坦地が僅少という河岸段丘特有の生活に不便な地勢の上野原市のJR上野原駅南口には12817坪もの土地が土地改良事業参加者の全員の同意が得られないために35年間も放置され、今も打開の目途が立っていない。所定の手続きを踏んで土地を収用するのが事態打開の正攻法であるが、マンションに認められている区分所有を「上野原という河岸段丘特有の生活に不利な地勢の下、首都圏への活力の吸引と少子化・高齢化に見舞われている上野原に限って特区として認める」ことは地域活性化のための最大かつ緊要の課題である。本件は憲法に保障された財産権を公共目的の観点から合理化するための新しい手法である。

 本件特区提案に先立って甲府で行なわれた内閣府の「あじさいキャラバン」説明会に筆者は出席し、「土地区画整理組合による全員一致の意思決定を多数決原理による意思決定に変更する特区」が成立する余地があるかどうかを事前に質問したが、「所有権は日本国憲法で保障されている絶対的権利であって、憲法が改正されない限り特区は成立しない」という説明を受け、「土地の区分所有」を「全員一致を得るための手段」と位置づけて特区提案を行なったが、法律がないから実施できないという筆者が想定した立場から1歩踏み込んだ法務省の判断が示されたことは再び画期的なことであった。

 「コンベンショナル ウィズドム」(conventional wisdom)という言葉がある。筆者はこの言葉を「社会的に認められた知恵の範囲で行われる判断」と理解しているが、今回の「土地の区分所有提案」はこの言葉の範囲を広げたものであると言えるであろう。これをどのように実際の場面に適用して行くか、筆者は今すぐにでも全員一致の意思決定が得られずにいる関係者に説明し、膠着状態を抜け出すきっかけを探りたいと考えているが、人間は感情を備えている動物であり、感情を抜きにした論理が反って事態を悪化させることも起こり得ると考えて、無理のない形でその機会が訪れるのを待っているところである。


本件特区提案と内閣府からの連絡は次の通りである。

提出日・提出先: 平成18年6月28日・内閣府構造改革推進室
  内閣府回答日: 平成18年7月21日  
  案件番号・回答内容: 法務省0520140 D(現行法規によって実施可能)  
    農林水産省1020230 C(法令がなく実施不可能)  
       
       

(注:筆者は本件提案を法務省関係事項として提出した。提出後、内閣府担当官から内容が農林水産省に関係しているので農林水産省にも提案してはどうかというアドバイスを受けて、農林水産省にも提出願った。結果は C であった)