1.状況認識
創立以来15年を経て地域との交流実績を積み重ねてきた帝京科学大学には、
| @ |
研究機関として持たねばならない問題に対する洞察力と問題解決への見識、 |
| A |
教育機関として持たねばならない知的な正直さと遵法精神、 |
| B |
若く実直な学生の行動エネルギー |
という3要素がある。
一方、大学が位置するこの上野原市には、
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河岸段丘特有の生活に不利な地勢、 |
| A |
少子化・高齢化の進展、 |
| B |
首都圏に地域の活動エネルギーを吸引されることから生じる不活性、 |
という問題がある一方で、
| @ |
恵まれた自然環境、 |
| A |
知識と経験を積んだ実直な人々がいる |
という要素がある。
とくに指摘されなければならないことは、上野原には河岸段丘のゆえに平坦地がほとんどないという地勢があり、この地勢が少子化・高齢化と活性化という地域の課題の解決に当たって平坦地に見られない不利な条件を形成していることである。
2.問題意識
少子化・高齢化と地域の活性化という地域の課題を解決する上で、道路・トンネル・福祉施設などのいわゆる「生活のためのハードウエア」が必要とされることは言うまでもないが、これまで行政が力を入れて整備してきた「生活のためのハードウエア」を車の前輪とすると、車の後輪であるハードウエアを活用するソフトウエア、すなわち
| @ |
「人と人をつなぐソフトウエア」、 |
| A |
「人と人をつなぐサービスの体系」、すなわち、「相手に何らかのメリットを与えるライブのアクションの体系」 |
が地域社会の解体の過程で機能不全に陥っているという現実がある。この車の後輪の部分は今日までに構築されてきた前輪の部分の効果を発揮させるために早急に整備されなければならない喫緊の課題である。
3.特区申請の目的
このような問題意識のもと、大学、とくに教育機関としての大学が持たねばならない法に対する正しい姿勢を強く意識し、既成概念では違法とされる行為を構造改革特区制度の主旨に沿って地域の問題解決に取り入れることを目的として、次の2件について構造改革特区を提案する。
4.特区提案
特区1:道路運送事業法によって規制されている自家用車による有料輸送サービス提供を、河岸段丘特有の山間地形の上野原市において、次の3条件の下で撤廃する。
@「ウエノハラ エコロ エコノ マネー」(UEM)の運営に当たるNPOが、地域の道路事情に精通し、十分な運転経験と本件への理解と熱意を持つUEMメンバーでドライバーズギルド(UDG)を組織する、
Aサービスの受け手はUEMに参加し、そのネットワークを通じて事前予約する、
B対価は法定通貨で計算された「割り勘ベースのガソリン代などの実費+10%相当額」を超えない範囲で当事者間でUEMで決済する
特区2:紙幣類似証券取締法で禁止されている地域通貨の法貨への兌換規制を次の2条件の下で撤廃する。
@ 上野原市商工会によって1960年代から実施されている大ケヤキシールスタンプの換金制度を経由する、
A 上野原市が授受するサービスに対する支払手段として活用する
5.特区1の背景説明:UDGによる自家用車による有料輸送サービス提供
上野原市においては冒頭に述べた河岸段丘独特の地勢によって、幅広い平坦な幹線道路はなく、国道20号線でさえ片側1車線で、坂の上り下りと急なカーブが多く、生活時間帯における交通は常に輻輳している。山間地の集落に向かう支線道路では路線バスの本数は1日数本で、採算が取れないとして廃止の意向がバス会社から出されている。タクシーはタクシー会社4社で推定20台が稼動しているが、料金が割高である上、中心街でさえ幹線道路から入り込んだ場所では車の離合が不可能な場合があり、ドア
トゥー ドアというタクシー最大のメリットを受けられない場合がある。
河岸段丘ゆえの高低差も大きな問題である。上野原の中心街は標高260メートル(国土地理院1/25000で読取り)の台地に広がっているが、標高140メートルの桂川沿いの道路との標高差は120メートルで、24〜30階建ての高層ビルに匹敵する。
ほとんどの地域で都市の交通の要衝となっているJRの上野原駅は、その昔機関車の煤煙が蚕の餌となる桑の葉に付着しはならないという理由で、川沿いの道路と中心街の中間の標高160メートルの位置に設置されている。桂川沿いの道路とJR上野原駅の標高差は20メートルで、JR上野原駅の利用者が桂川沿いの道路にある駅南口からプラットフォームに辿り着くには一旦86段の階段を上り、さらに31段の階段を下らなければならない。上り下りする階段は合計117段、29メートル、ビル換算6〜7階分である。中心街からJR上野原駅を利用する場合は幅約12メートル、奥行き約30メートルの信じられないような広さのバスターミナルに到着する路線バスを利用できるもののバスの本数は限られているのが現状である(このバスターミナルには客待ちのタクシーも数台駐車するため、路線バス3台が入ると自家用車の送迎はほとんど出来ない)。
このような地勢から生まれている公的な交通手段の不備は私的な交通手段を持たない高齢者や子育て途上の母親にとって通院・通園・通学など日常生活の多くの場面で安心・安全な生活の障害となっているばかりでなく、地域の恵まれた自然環境と知識と経験を積んだ実直な人々がいるという地域活性化要因を生かしえない根本的な原因となっている。
「@UEMの運営に当たるNPOが、地域の道路事情に精通し、十分な運転経験と本件への理解と熱意を持つUEMメンバーでドライバーズギルドを組織する、Aサービスの受け手はUEMに参加し、そのネットワークを通じて事前予約する、B対価は法定通貨で計算された「割り勘ベースのガソリン代などの実費+10%相当額」を超えない範囲で当事者間でUEMで決済する」という条件の下で道路運送事業法の適用除外を求める本件提案は、地域特有の地勢から生まれるハンディキャップを克服し、少子化・高齢化・地域活性化問題に解決の糸口を与えるものである。
提案書では「例えば、Aさんが市役所へ出かけるTPOをネットワークにインプットすると、市民病院へ行きたいが交通手段を持たない年配のBさんが自分のTPOを調整して予約、便乗する、その場合BさんはAさんに対して割り勘でUEMで対価を支払う。Cさんの特別の要望に応じる場合、Aさんは「実費+10%相当額のUEMをCさんから受け取る」という例を示したが、サービスの提供者とサービスの受益者のマッチングは、E-メールや携帯電話・固定電話によって行うことも可能である。
なお、UEM未加入者がドライバーズギルドのサービスを受けようとする場合は、UEMのメンバーあるいはNPOを通して試行的に予約でき、その後メンバー登録に進むという仕組みを想定している。
本件特区が実現すると、上野原の自然環境の中で自生しているクワの実を採取してジャムを作ったり、旧甲州街道犬目の宿から見える浮世絵に描かれた富士の景観を鑑賞したり、新緑が出る前に鶯が囀るのを見たり、「完熟野菜」の栽培農家の訪問とサラダの賞味など、資源化されていない地域の観光資源の資源化に道を開き、地域の活性化に寄与することが期待される。
6.特区2の背景説明:UEMの発行
上野原市では、大ケヤキシールスタンプ加盟店で買い物をすると200円毎に大ケヤキシールスタンプ1枚がもらえ、このシール160枚を所定の台紙4ページに貼り付けると都留信用組合上野原支店で500円の法貨と交換される仕組みが1960年代から今日まで定着している。
この仕組みの上に、新たに地域商工会代表・行政代表・地域通貨利用者代表・大学代表で構成されるNPOを設置し、仮称「ウエノハラ エコロ エコノ マネー」(以下UEMと略称)を発行する。UEMは、@登録されたメンバー相互の間で相対で合意された値段で行われるグッズとサービスの取引の決済手段、A通貨が持つ貯蓄機能がマイナスの金利または有効期限の設定によって剥奪されているがゆえに利用が促進される仕組みを持つことを想定している。
NPOは、UEM利用希望者から徴収する入会金(市民および近隣地域の参加希望者が広く参加できるように1000円またはケヤキシール1000円相当分を想定)とUEMの賛同・支援者からの賛助金(1口10000円を想定)によって既存のケヤキシール発行団体からUEMの円滑な流通に必要なケヤキシールを購入し、ケヤキシール40枚を1UEMとする『金券』を発行してUEMの地域通貨としてのファシリティーを確保する。この金券は、都留信用組合上野原支店で500円の法貨と交換される大ケヤキシール160枚を貼り付けた所定の台紙4ページの1ページを見合いに発行されるがゆえに、125円の法貨相当の購買力を与えられる。
この仕組みの導入は商店街の大ケヤキシールの利用範囲の拡大という効果を生み出すことになるので、既存の大ケヤキシールスタンプ参加商店での買い物の増加のみならず、理容・美容など当初から加盟を想定されていなかったサービス業のショップが新たにケヤキシールスタンプに参加する道を開く切っ掛けとなり、商店街の活性化が期待される。
本件構造改革特区提案の今ひとつの柱は、上野原市がUEMを活用し、少子化・高齢化・地域活性化と住民の安心・安全のために必要なサービス活動(相手にメリットをもたらすライブのアクション)に対して円で表示されるサービス対価の1/2のレートでUEMを支払い、市が提供する行政サービスに対してはUEMの券面金額の2倍の支払能力を認めることを想定している。このことは行政が市民からサービスを購入する際はマーケットプライスの1/2で購入し、市民に対してサービスを提供する際は現在適用しているマーケットプライスによることを意味する。行政が市民からサービスを購入する際はマーケットプライスの1/2という考え方は、堀田
力 氏が『小泉内閣メールマガジン第67号(2002年10月24日)で「ボランティア活動をした者に支払う謝礼金」として提案された「スタイペンド」(stipend)そのものと考えている。
この構想の中で、市が提供を受ける少子化・高齢化・地域活性化と住民の安心・安全のための諸活動として、@地区ごとに設けられている憩いのサロンなどを利用した元気なお年寄りによるベビーシッティング、A小学生の登下校の際の安全パトロール、B街の清掃・美化活動、C不法投棄物の処理、D桂川水系の浮遊ごみの処理、E観光資源の整備と観光資源の提供などを想定し、市が提供する行政サービスとして、@住民票・印鑑証明などの発行(料金)、A市営温泉・プール・野球場・市庁舎に併設されているホール・会議室の利用(料金)、B粗大ごみの処理(費用)その他を想定している。
今ひとつ敷衍したいのは、「地域通貨はそれ自体が通貨であり、通貨機能の喪失という事態は許されない」ということである。この点について、UEMは「入会金と賛助金を準備資産として発行される上に、商店街クーポン券を経由した円兌換と上野原市が授受するサービスへの支払いによってその価値が担保される」ので、北海道栗山町をはじめとするボランティアベースの地域通貨が内包している通貨機能の喪失というリスクがなく、その仕組みのゆえに持続性を持つことである。したがって、UEMは地域通貨本来の機能、すなわち、「法定通貨(円)下で形成されているビジネスライクな人間関係(人々のネットワーク)では掬いきれない『小さな善意』を支えとした少子化・高齢化・活性化のエネルギーを生み出すことが期待できるのである。地域通貨が北海道栗山町で実施された当初、ある老婆の「地域通貨は今に始まったことではない。(顔見知りの間で)昔から行われている『手間貸し』(サービスの授受)そのものだ」という発言がNHKテレビで伝えられた。この発言を借りると「UEMは未だ面識のない上野原市民の間の『手間貸し=サービスの授受』を上野原市という地域で、合理的・効率的かつ持続可能な形で行う」現代の新しい社会基盤である。 以上
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